トラック運送事業者の業務改革

トラック運送事業者の業務改革

トラック運送事業者(貨物自動車運送事業者)の業務改革について、基本的な考え方を記載します。はじめに、一般的な事業課題を概観し、次に、トラック運送事業者のビジネスモデルを、次に、業務改革のコンセプトについて確認します。

1.トラック運送事業者の事業課題

全日本トラック協会の資料などを参考に、トラック運送事業者の事業課題と対応方針を一枚の表に纏めています。

課題分野を「輸送サービス」「事業採算性」「事業リソース」「経営管理・マネジメント」「事業継続」の5つに分け、それぞれ、具体的な事業課題と基本的な対応方針および、参考として、情報システムを活用した施策例を記載しています。

大小様々な事業課題があろうかと思いますが、まずは課題を棚卸ししなければ、今後の戦い方が決まりません。

トラック運送事業者の事業課題1

トラック運送事業者の事業課題2

トラック運送事業者の事業課題3

トラック運送事業者の事業課題4

ちなみに、トラック運送事業者に仕事を依頼する側の立場にある方も、自社の物流の効率化を検討するのであれば、トラック運送事業者が抱える事業課題は把握すべきと考えます。トラック運送事業者が物流効率化を進める時、その外的要因と内的要因がありますが、外的要因については荷主企業の協力なくして対処しようがないからです。

2.トラック運送事業者のビジネスモデル

トラック運送事業者のビジネスモデルをビジネスモデル図とビジネスモデルキャンバスで表してみます。

まずはじめにビジネスモデル図を見てみます。

ビジネスモデル図_トラック運送事業者

いたってシンプルです。物流サービスを提供し、その対価を得る、というものです。

とはいえ、これは一例です。物流サービスの中身には、例えば取引先企業の物流センターを運営するところまで含まれているものもあれば、単に、輸配送指示に従って配送するだけのものもあるでしょう。また、スポットで車両を回している(サービスを提供している)こともあれば常傭契約にもとづいて、固定的にサービスを提供しているケースもあるでしょう。

ビジネスの大枠の型を可視化するにはこの図が一番わかりやすいと思います。

次にビジネスモデルキャンバスで表現してみます。

ビジネスモデルキャンバス_トラック運送事業者

先ほどのビジネスモデル図と異なり、その型だけでなく、内容にも踏み込んで表現となっています。ビジネスモデル図をみる限りでは同じような事業であってもその実態はかなり様相を異にするということがあります。

上図中に「and」や「or」に続けて記載している部分があります。このandやorに続く部分を実践している企業とそうでない企業とでは、そのビジネスにかなりの差があると思われます。

ここに記載した内容は一例にすぎません。一度、ご自身の手で描いてみることをおすすめします。意外な発見があると思います。

3.トラック運送事業者の業務改革のコンセプト

業務改革には、業務領域を拡大する、あるいは特定領域に特化(低温物流特化など)、様々なアプローチが考えられますが、基本となる考え方(コンセプト)は「運行効率の向上」です。

運行効率とは、トラックという経営資源をどれくらい有効に活用しているかを測る指標のひとつです。

運行効率=稼働率×実車率×積載率

稼働率=延実働車両日数(日車)÷延実在車両日数(日車)
実車率=実車走行キロ数(Km)÷総走行キロ数(Km)
積載率=輸送トン数(t)÷最大積載能力トン数(t)

ここで、トラック運送事業者の利益構造ツリーモデルを確認します。

トラック運送事業者の利益構造ツリーモデル

このツリーモデルはかなり簡略化して記載していますが、本質的なところは変わりません。図中の右端が基本的なアプローチとなります。実行可能性や重要度(インパクト)等を踏まえると、運行効率(=実働率×実車率×積載率)の向上がキーファクターとなることがわかります。

これはトラック運送業においては基本中の基本ですが、実務において「ではどうやって運行効率を高めるか?」という問いに答えるのは大変難しく、この点にこそ経験やノウハウが求められます。

実務では最初に業務分析を行い、実際のところ運行効率はどれくらいなのか?それはセグメント別(荷主別、方面別、物流センター別、営業所別など)に見たときどのような特徴があるか?を把握するところから始めます。

4.トラック運送事業者の業務改革の進め方

業務改革を進めるのは誰か

現状把握から始め、あるべき姿の設定、問題・課題の抽出、施策(業務施策とIT施策)の設定・・・と進めます。

進め方がわかったとしても、実際には「推進者」が問題となります。適切な推進者がいない・・・という問題です。

  • 業務改革のような非定常業務に慣れている者がいない
  • おのずとIT活用を視野に入れることになるがITに明るい者がいない
  • 定常業務に忙殺されておりまとまった時間がとれない

業務改革には経営トップのリーダーシップとバックアップが必須です。業務改革の推進者がプロジェクトチームであったとしても、経営トップのバックアップなしでは早晩、行き詰まってしまいます。定常業務であれ非定常業務であれ、従業員(プロジェクトチーム)がその能力を発揮できる環境を整えるのは経営トップの役目です。

ジョン・コッターの<8つの過ち>を読んでみてください。読んでいただければ気づくかもしれませんが、はじめから「経営者視点」で記載されており、わざわざ「経営トップのコミットが必要」などとは書いていません。それは当たり前の事だからです。

簡単な事ではありませんが、プロジェクトチームに必要な権限と予算、そして時間を与えなければなりません。ここまで考えて、どうしても内部リソースで間に合わない場合に、改めて外部支援者(コンサルタントやITベンダー等)の活用を考えます。

煮え切らない経営トップ

余談ですが、私は、会社をなんとかしようと孤軍奮闘している担当者(といっても役員クラスですが)と、どうも本腰が入らない二代目経営者・・・という構図に何度かでくわしました。

担当者は古参の者であり「この流れはまずい。このままでは企業として成り立たなくなる」という危機感があるのですが、二代目経営者にはその流れが見えていない、という図です。結局、「時間と資金の逐次投入」を繰り返すだけで何も変えることができていませんでした。

5.参考文献

基本的には私個人の経験をベースに、全日本トラック協会やJILSがWeb上で公開している資料を参考にしていますが、加えて以下の書籍も参考にしています。他にも多数ありますが、その一部を紹介させていただきます。