基本構想立案の進め方

 

基本構想立案の進め方

基本構想立案の全体像

今後の方向性を決める重要な工程です。ここで方向性を誤ると、その後の工程がうまくいったとしても望む地点には到達できません。

基本とする手法はギャップ分析(asis-tobe分析)です。ギャップ分析とは、現状の姿(as-is)とあるべき姿(to-be)とを比較し、その差(ギャップ)を抽出する分析手法です。

ギャップ分析(as-is,to-be分析)

基本構想立案プロセス

Step1. 予備調査
Step2. 現状の姿の把握 (as-is)
Step3. あるべき姿の設定(to-be)
Step4. ギャップ分析
Step5. 施策の立案
Step6. ロードマップの策定

基本構想立案プロセス図

Step1.予備調査

予備調査では企業と企業の置かれている状況を概観します。予備調査を通じ、どこでどんな問題が起きているのかあたりをつけつつ、本調査(Step2.現状把握)のための計画を立てます。

企業概要の確認

ミッション・ビジョン・バリュー、組織体制(体制図、職務分掌)、経営資源(拠点数、車両数)、主要取引先(販売先、仕入先、協力企業)、事業概要(ビジネスモデル、商流、物流、情報流)、業績推移、財務状況などを調査します。

参考ページ ビジネスモデルと戦略

外部環境の分析

市場の動向、競合の動向(代替品、潜在競合含む)を把握します。

内部環境の分析

市場動向及び競合動向を踏まえて自社の動向を把握します。

トップインタビュー

経営トップの問題認識を確認し、企業経営のかじを取る経営トップの考え・理念、戦略をよく理解します。

課題整理

課題を因果関係分析やツリー図として体系化し整理します。

現状調査計画の立案

これまでの調査で企業と企業を取り巻く環境を概観し、問題領域が見えてきたら、問題を解決するために必要な、より詳細な情報を集めなければなりません。ここでは、そのための計画を立案します。

Step2. 現状の姿の把握 (as-is)

既存資料の確認、聞き取り調査、現場訪問による確認などあらゆる方法を用いて実態を詳細に把握します。できるだけ客観的・定量的に把握します。ここが曖昧だと、この後に策定する施策と効果について納得感を得ることができません。

現行業務分析

業務プロセス、業務フロー、ビジネスルール(決済基準、在庫基準など)、収益およびコスト構造(例えば、物流センター別収支、物流機能別コストなどのセグメント別に把握)、サービスレベル(受注締、リードタイム、ロットなど)、パフォーマンス(積載率、在庫回転率など)、品質(欠品、誤納、汚破損、遅配率など)

現行システム分析

システム関連図、機能一覧、データモデル、アーキテクチャ、システム構成、利用状況、現状課題

問題点の整理(発生型問題点)

問題点ネットワーク(WHY型のロジックツリー)、因果関係分析図

Step3. あるべき姿の設定(to-be)

難しい工程です。前提を疑い、制約条件と取り払って考えなければなりません。また、ITを徹底活用するつもりで業務とシステムをデザインしなければなりません。当然、他社事例や先行事例についても十分に調査します。

ビジネスモデルと戦略の確認

ビジネスモデルがどのように変わる(再構築/強化)のか、それに伴い戦略がどのように変わるのか、明らかにします。ビジネスモデル、戦略、業務機能、情報システムおよび組織体制はすべて整合しなければなりません。

機能(組織機能と業務機能)の定義

ビジネスモデルを確認できたら、あるべき機能を定義します。”我々はどのような機能を担うべきか”という問いを常に投げかけながら検討しなければなりません。

ここで定義すべき機能には、組織機能と業務機能があります。組織機能とは事業環境変化を捉え対応するために、組織が恒常的に備えるべき機能です。業務機能とは組織機能を駆使して行う業務運用上の働きです。

例えば、市場需要に応じて物流ネットワークを整備する機能は組織機能ですが、整備された物流ネットワーク上で行う物流活動は業務機能です。

情報システムのイメージ

業務とITがどのような相互作用をもたらすのか、そのために必要なシステム機能は何かを新システムイメージとして描きます。具体的な作成物としては新システムイメージ(関連図、鳥瞰図)、機能概要一覧などがあります。

組織体制と役割分担の検討

あるべき機能は誰が担うべきか?を明らかにします。内部組織のみならず外部組織の利用や新組織の編成も視野に入れて検討します。ここでも現状の延長線で考えないことが重要です。

Step4. ギャップ分析

「あるべき姿の設定」で明らかにした機能(組織機能と業務機能)を軸に、現状とのギャップ(課題・問題点)を把握します。以下に具体例を示します。

(例)あるべき機能

組織機能:状況に応じた物流ネットワークをデザインする。
業務機能:幹線-配送ネットワークを活用した輸配送を行う。

(例)現状の姿

現在の物流ネットワークは協力企業に丸投げであり、半ば成り行きでできあがったものであり、販売物流領域のみを対象としている。

(例)ギャップ

能動的に物流ネットワークをデザインする組織、機能が存在しない。
調達物流領域を含めた物流ネットワークを整備できていない。

Step5. 施策の立案

施策を立案するには原因分析が欠かせません。原因分析にはwhy型のロジックツリーが有効です。ひとつひとつの原因に対してどうやって対応するかを検討します。この時にはHow型のロジックツリーが有効です。立案した施策同士が相反する場合もありますが、最初の段階ではとにかく思いついた施策は書き出しておきます。

最後に各々の施策を評価します。評価軸は、効果、実現性、時間、実行容易性、戦略との整合性の5つが基本となります。一つ一つ評価を行ったら、全体整合をとりながら施策を体系的に整理します。

尚、この時点では厳密な投資対効果の評価は必要ありません(必要ないというか、この段階では難しいでしょう)。次工程で業務の定義と新システムのイメージを策定した後に投資対効果を算定します。

業務施策とIT施策

業務施策とは新たにITを活用することなく実行できる施策です。IT施策とは情報システムをその中心とする施策です。施策出しは、洞察力と仮説設定力をフルに活用して行います。施策によってどのように業務が変わるのかをBefore-After図などで記載します。

Step6. ロードマップの策定

2~3年の時間軸でロードマップを策定し、今後、どれくらいのスピード感をもって施策に取り組むのかを明らかにし組織内で共有します。

システムの構築にかかる時間については、次工程の「システム企画」を経て、めざすべき業務とシステムがよりはっきりと見えてきますので、そのあとに初めてあたりがつくようになります。

その結果、ロードマップを変更することもありますが、現段階ではビジネスが要求するスピード感でロードマップを描いておきます。

参考文献

企業再生コンサルタントによる一冊。システム開発とは直接関係しませんが、現状把握(すなわちAS-ISの把握)の際には大変参考になる。もっと詳細に書かれた本もありますが、コンパクトにまとめてありますので要点をさっと抑えたい時などに重宝します。

上では「あるべき姿の設定(to-be)」とさらっと書いていますが、ここが最も肝心です。また「あるべき姿」に正解などありません。自分自身で正解をつくるしかありません。

「事業戦略策定ガイドブック」は大変読みやすく、一見、入門レベルの内容に見えるかもしれませんが、戦略策定について大なり小なり頭を悩ませた経験のある方にとっては、とても実践的な本として読めると思います。

実は、基本構想立案について、これときまったやり方があるわけではありません。実際のところ、プロジェクトの状況(企業をとりまく環境、残された時間、企業側のリソース・能力、我々支援者側のリソース・能力などなど)を踏まえた上で、その都度、「やり方」を定義します。(ちなみに、これをテーラリングといったりします。)

上に紹介した本では、大手ITベンダー各社の「やり方(の一部)」が紹介されています。テーラリングする際の「引き出し」として使っています。