システム分析-その1

システム分析の手順

2-1.事業戦略を把握する。
2-2.あるべき姿を描く。
2-3.問題点を定義する。
2-4.施策を立案する。
2-5.リスク分析を行う。
2-6.投資対効果を見積る。
2-7.ロードマップを策定する。

2-1.事業戦略を把握する。

1)事業戦略システム分析

システム分析に入る前に事業戦略の確認を行う。通常、事業戦略には事業の方向性、事業のKFS、事業の推進方針などが示唆されている。事業戦略と整合したシステム分析にこそ価値がある。事業戦略の確認は必ず行う。

尚、必要であれば事業戦略の見直しや再立案を行う。

事業戦略を把握するために確認すべき情報は、次の「2)事業戦略立案の流れ」で記載している情報と同じである。

2)事業戦略立案の流れ

①事業を概観する。

戦略立案の対象となる事業の概要を把握する。現状を表す資料(前工程のアウトプット資料、ビジネスシステム図、問題点ネットワーク図など)を使って確認する。

【インプット】
  • 調査結果一覧表
  • 現:業界俯瞰図
  • 現:ビジネスモデルキャンバス
  • 現:ビジネスシステム図
  • 現:PL/BSブロック図
  • 現:組織図
  • 現:業務機能一覧
  • 現:システム概要図
  • 現:システム機能関連図
  • 問題点ネットワーク図

②KFS(重要成功要因)を探る。

KFSとは事業を成功させる鍵である。KFSを外した活動はうまくいかないが、KFSを抑えればうまくいく確率が高まる。KFSは環境の変化とともに変わる。KFSと思っていた事がそうではなくなっていることもある。

〈KFSの見つけ方〉

KFSを見つける絶対的な方法はない。事業分析のフレームワーク(SWOT分析、3C分析など)を用いて、多様な切り口で考え抜くしかない。対象市場はできるだけ絞る。対象市場を広くとるとKFSの抽象度が高くなってしまい、意味のあるKFSを抽出することは難しくなる。

【アウトプット】
  • 事業コンセプト図(KFS)

③市場戦略を立てる

市場戦略とは市場において優位性を作り出すための方針と計画である。市場戦略は大別するとコストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中化戦略の3つからなる。

〈コストリーダーシップ戦略〉

ローコストで競争優位性を作り出すことを狙った戦略。規模がモノを言う戦略であり、事実上、中小企業の選択肢には成り得ない。

〈差別化戦略〉

競合他社との差異を生かして競争優位を作り出すことを狙った戦略。
競争優位を作り出すには、顧客の購買行動や問題解決プロセスに着目し「価値要素」を抽出する。次に、自社の価値要素と他社の価値要素を「価値曲線」で比較する。最後に、自社と他社の価値曲線比較しながら、価値要素を高めるか低めることで競争優位が生まれないかを検討する。

尚、価値要素とは「顧客が期待すること」である。(例:正確かつ迅速な納期回答・・・等)

〈集中化戦略〉

特定の市場に経営資源を集中投下し、リーダー企業と戦わない戦略。
リーダー企業にとって魅力の低い市場やリーダー企業内部で不協和が起きる市場がターゲット。ニッチャー企業がとる戦略。
リーダー企業にとって魅力の低い市場とは、 規模が小さい市場、利益率が低い市場であり、リーダー企業内部で不協和が起きる市場とは、既存資産が足かせになる市場、既存事業と共食いになる市場、既存の理論と不整合となる市場である。

【アウトプット】
  • 戦略チャート図(差別化/集中化)

④競争・協調戦略を立てる

業界全体を俯瞰し、どの企業から利益を奪うのか(競争戦略)、どの企業と協調して利益を増やすのか(協調戦略)を考える。業界を俯瞰するために業界俯瞰図をつくる場合もある。

〈競争戦略〉

競合他社に競り勝つための戦略。競争戦略の基本パターンは「企業の交渉力を弱める(例.垂直統合)」や「相手企業の動きを封じ込める(例.スイッチングコストを形成)」ことである。

〈協調戦略〉

競合企業、川上企業、川下企業、補完的生産者と協調し、コスト削減や効率化、新たな価値の創出を図る戦略。協調戦略を成功させるポイントは「相手企業の戦略を把握する」「相手企業にメリット与える」の2つである。

【アウトプット】
  • 戦略チャート図(競争/協調)

⑤ビジネスシステムを再構築する

これまでの検討結果に基づいて、実際に事業を行うための仕組みづくりを行う。コアとなる業務(競争優位の源泉となる業務プロセス)は自社で行う。それ以外の業務については外注化も視野に入れ担い手を決定する。

ビジネスモデルキャンバスやビジネスシステム図を用いてビジネスシステムを整理する。

【アウトプット】
  • 業界俯瞰図
  • ビジネスモデルキャンバス
  • ビジネスシステム図
  • PL/BSブロック図

2-2.あるべき姿を描く。

1)あるべき姿を描くことの意味

「あるべき姿」とは企業が目指す姿、理想の姿、目標とする姿の事である。「あるべき姿の実現に貢献すること」こそがシステム化の目的である。「あるべき姿」が定まらないままシステム分析を続けるのは、ゴールもわからずに走りつづけるようなものである。

あるべき姿は5つの要素で構成される。

  • ビジネスモデル
  • 事業戦略
  • 業務
  • システム
  • 組織

「あるべき姿を描く」という事は、「5つの要素を図や文章を用いて明文化する」という事である。このうち「ビジネスモデル」と「事業戦略」については、前の段階「2-2.事業戦略を把握する」を通じて明らかになっている。

2)あるべき姿の探索

あるべき姿を描くための決定的な手順はないが、検討する上での重要なポイントはある。

  • 前提を疑い、制約条件を取り払って考える。
  • ITを徹底活用するつもりで業務とシステムをデザインする。
  • 他社事例や先行事例について十分に調査する。

①ビジネスモデルと事業戦略の確認

ビジネスモデル(およびビジネスシステム)が、現行からどのように変わるのか、またそれに伴い事業戦略がどのように変わるのかを確認する。

【インプット】
  • 事業コンセプト図(KFS)
  • 戦略チャート図(差別化/競争/協調)
  • 業界俯瞰図
  • ビジネスモデルキャンバス
  • ビジネスシステム図
  • PL/BSブロック図

②あるべき業務イメージの定義

確認したビジネスモデル、事業戦略の実現に必要な業務機能を定義する。ビジネスモデルキャンバスやビジネスシステム図を確認しながら、網羅的に検討する。

業務機能は組織機能と狭義の業務機能に大別される。

<組織機能>

事業環境の変化を捉え、その変化に対応するための働き組織が恒常的に備えておくべき機能間接的な機能

<業務機能(狭義)>

組織機能を駆使して行われる、業務を遂行するための働き直接的な機能

<例>

組織機能:市場の変化に応じて物流網を再整備する
業務機能:整備された物流網上で行われる物流活動そのもの

【アウトプット】
  • 業務機能一覧

③あるべきシステムイメージの定義

先に定義した業務機能を実現するために必要なシステム機能、また、効率的に行うために必要なシステム機能を定義する。ビジネスモデルキャンバスやビジネスシステム図を確認しながら、網羅的に検討する。

【アウトプット】
  • システム概要図(システムの利用イメージ、システム構成のイメージがわかる資料)

④組織体制と役割分担の定義

先に定義した業務機能は誰が(どの部門、担当が)担うべきを定義する。内部組織のみならず外部組織も視野に入れて検討する。必要に応じて新組織の編成も視野に入れて検討する。

【アウトプット】
  • 組織図(必ず、責任範囲と役割をセットで記載する)

参考文献

事業戦略策定ガイドブックー理論と事例で学ぶ戦略策定の技術ー

競争しない競争戦略 ―消耗戦から脱する3つの選択

 

システム分析-その2