システムリプレース提案が通らない理由

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もはや情報システム(以下、単に”システム”とする)が”絡まない”業務はないと思います。
現場の担当者は、日々、何らかのシステムを使って業務を遂行していることでしょう。
日々の利用を通じて、徐々に不満や要望がたまっていくこともあるでしょう。

・利用者やデータが増えたせいか、システムの性能が遅くなった気がする
・解消されていない不具合が残っているため運用で回避しているが、面倒だ
・システムを導入した当時とはビジネス環境もIT技術も変化している。今ならもっと効率的な業務プロセスを実現できるのではないか

などなど、様々です。

さて、上記のような不満や要望が蓄積してくると、ぼんやりとシステムリプレースについて考えるようになります。
償却期間やリース期間の残もあと1~2年ほどともなれば、いよいよ本格的に検討するようになります。

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情報システム部門がいれば、システムリプレースの上申は、ユーザーである業務部門の協力を得て情報システム部門が行うところが多いかと思います。
情報システム部門は業務部門にヒアリングを行い、現場が何に困っているのかを整理します。
それから解決策として「システムのリプレース」を役員層に提言(上申)します。

「今、現場ではこんな問題が発生している。」
「システムをリプレースすれば、現場の問題は解決する。」
「リプレースする場合のコストはこれくらいだ。」
「ついでは、システムのリプレースについて承認いただきたい。」

といった具合です。

現場サイドとしては、

・日々の(業務上の)ストレスを軽減、解消できる
・業務の効率化(コストダウン)、品質向上、スピードアップが図れる
・今より楽に、かつ、安心して業務に取り組める

というメリットがあるわけですから、早く進めてほしいと考えるものです。
※もちろん、「変化を嫌う人」もいますので、全員が全員というわけではありませんが。

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しかし、上述した上申内容では、経営層を納得させることは難しいでしょう。
現場サイドの主張が、確かにその通りであったとしても、システムリプレースの決定を下すには情報が足りません。
とある視点がすっぽり抜けているのです。

それは、「経営者(社長)の視点」です。
「システムをリプレースすると、経営者にとってどんなよいことがあるのか?」
という視点です。

突き詰めれば「経営数字の視点」とも言えます。
「売上、コスト、利益にどのような影響を与えるのか?」
という視点です。

この視点で整理した「システムリプレースが必要な理由」を提示できなれば、そう簡単には社長は首を縦に振ってくれないでしょう。

尚、「売上、コスト、利益に影響しないシステムだってある」と考える方もいるかもしれません。
例えば、コンプライアンス(法令順守)強化やEC(従業員満足度)の向上を狙ったシステムリプレースなどが該当すると考えることかと思います。
確かにこの類のことが主なテーマとなったシステムリプレースは、直接的に、売上、コスト、利益に影響を及ぼすものではないでしょう。

しかし、少しだけ目線を高くし、もう少し長い時間軸で考えるとそうではないことに気づきます。

コンプライアンスがしっかりしていないと、事故などのために市場(顧客)の信用を失うかもしれません。それは売上の減少(消滅)に他なりません。
ECの低さはモチベーションの低さ、パフォーマンスの低さ、離職率の高さにつながります。パフォーマンスが低下すれば業務効率は落ちます。
離職率が高いと教育費も余計にかかりますし、組織全体としてのパフォーマンスも維持することが難しくなるでしょう。

企業が大きく成長するときは、組織内のコミュニケーションがうまくとれなくなったり、業務遂行レベルを一定以上に維持するのが難しくなったりします。
そのために、コミュニケーションツールを活用したり、業務遂行レベルを維持するための仕組みをインクルード(内包)したシステムを活用したりするのです。
これらの取り組み、仕組みがなければ、ある一定以上の規模の売上を実現するのは難しいでしょう。

このように見たとき「売上、コスト、利益に影響しないシステム」というものは存在しません。
本当の本当に「売上、コスト、利益に影響しないシステム」が存在するとしたら、そのシステムは全く無駄なシステムと言えます。

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「誰も教えてくれなかった システム企画・提案 実践マニュアル(日経BP社)」によると、解決しようとしている課題は4つのレベルで整理すべし、とあります。

すなわち、

・経営のレベル
・業務のレベル
・業務の仕組みのレベル
・システムのレベル

です。

簡単な例を沿えると、以下のようになります。

・経営のレベル・・・売上20%アップ
・業務のレベル・・・提案タイミングの早期化
・業務の仕組みのレベル・・・全社での提案情報・ノウハウの”即時”共有と活用
・システムのレベル・・・提案情報・ノウハウのデータベース化

現場サイド起点でシステムリプレースを考える場合、業務の仕組みレベル、システムのレベルにばかりフォーカスしがちで、経営レベル、業務レベルについての考察が不足していることがあります。経営層は経営レベルとその経営を実現させる業務レベルに特に関心があるのは当然の事です。

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上の4つのレベルで整理しておかないと、以下のような不毛なやり取りが繰り返されることになりかんせません。

現場「提案情報・ノウハウのデータベース化が必要なんです!」
社長「そういわれてもお金かかるんでしょ?データベース化しても売上アップやコストダウンできるわけじゃないんでしょ?」
現場「それは・・・でもないと困るんです。大変なんです!」
社長「困っているのはわかったが、、、システム化せずになんとかならないの?」

というような話になってしまいます。話がかみ合わないのです。

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参考文献

誰も教えてくれなかった システム企画・提案 実践マニュアル

150ページほどの厚さしかありませんが、非常にわかりやすく充実した内容だと思います。
上記の「4つのレベル」の話以外にも役に立つ内容満載です。
システム企画・提案に携わる方には強くお勧めします。
私もときどき読み返しています。初心忘るべからず。

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