システム投資効果の考え方

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イニシャルコストとランニングコスト

システムの導入とは、システム投資を行うということですから、当然、どこかのタイミングで投資対効果について検討しなければなりません。投資対効果と言うとちょっと固いのですが、要するに「この買物は割に合うのか?」ということです。

とあるシステムの導入のために、SIerやソフトウェアベンダーに、作業費やソフトウェア代金、必要なハード(パソコンやプリンタ)などを含めて、1,000万円を支払う必要があったとしましょう。これは、いわゆるイニシャルコスト(初期費用)と言われるものです。

 

また、導入したシステムを使い続けるためには、イニシャルコストのほかにランニングコストが必要となります。消耗品費や保守料がそれにあたります。コピー機に例えるなら、コピー機本体がイニシャルコストで、トナーカートリッジや紙代がランニングコストとなります。

さて、とあるシステムのイニシャルコストが1,000万円、ランニングコストが年あたり60万円(イニシャルコストの6%)だったとしましょう。

新たに導入した情報システムを5年間使うと仮定すると、5年間の総コストは次のようになります。

イニシャルコスト 1,000万円
ランニングコスト 300万円(=60万円×5年間)
5年間の総コスト 1,300万円

5年間で1,300万円です。5年間使って、1,300万円以上のメリットがあると判断できれば、投資してもいいということになります。

投資対効果を考えるときに注意すべきこと

例えば、システムの導入により社員を2名分の人件費を削減できると見込んだとします。

1人当たりの人件費が年額400万円だとしたら、5年間で4,000万円のコストダウンです。

1,300万円使って4,000万円のコスト削減ですから、差し引きして正味2,700万円の投資効果です。

この計算結果をみて「これは投資するしかないね!」と考えるかもしれませんが、実はいくつもか落とし穴があります。

社内費用

上記のコストには、社内費用が含まれていません。

例えば、1,000万円規模のシステム導入となると、多少なりとも自社社員の時間を奪うことになります。プロジェクトの進捗管理、課題管理はもちろん、関係部署との調整や報告、社内打ち合わせ、ベンダーとの打ち合わせ(通常、要件や仕様確定のために、かなりの時間を割いて打ち合わせすることになります)、受け入れテスト・運用テストの実施などです。これらもイニシャルコストと見るべきです。

また、システムを運用・維持していくために新たにIT要員を準備しなければならないとしたら、その分のコストもランニングコストに加えなければなりません。

人件費の削減効果の妥当性

システム導入により2名分の仕事がなくなったとしても、それだけでは4,000万円のコストダウンは実現できません。2名分の仕事がなくなっただけでは、その2名が暇になるだけで、給料を支払わなくてよいわけではないからです。

現実的には、残業を減らす(残業代の削減)か、配置転換により余計な新規雇用を抑えるといった施策を考えることになると思います。「効率化=人件費削減」ではない、ということを覚えておいてください。

コストダウン以外の効果

投資効果はコストダウンだけではありません。売上アップや作業品質の向上、作業スピードの向上、コミュニケーション円滑化、見える化などもあります。定量効果(コストダウン、売上アップ)だけでなく、定性効果についても目を配りましょう。

さらにその確率についても考慮する必要があります。

“うまくいけば”4,000万円のコストダウンなら、”うまくいかない場合”はどの程度のコストダウンが見込めるのか?8割程度(3,200万円)は期待していいのか、半分以下(2,000万円)なのか。

“たら””れば”の世界ですので、やりすぎても仕方がないのですが、コストは100%発生するのに対し、期待される効果は100%ではない、ということに留意してください。

代替案について

「1,300万円の投資で、確実に3,000万円のコストダウン」が見込める投資案件の他に、「1,300万円の投資で5億円の売上アップ」が見込める案件もあるかもしれません。でも、投資に回せるお金は1,300万円だけです。

ペイする(投資の回収見込みが立つ)からといって、即座にオーケーというわけではありません。いろんな代替案とあわせて評価すべきです。

避けられない投資もある

避けられない投資もあります。インフラ関連のアップデートなどはその一つです。投資対効果以前の問題で、事業継続にかかわるような投資はやらざるを得ません。

最後に

投資対効果についてその要点をいくつか書きました。システム投資効果の最大化を図るには全体設計が必要です。

全体設計とは、経営戦略とIT戦略の立案、これらの戦略にもとづいたITグランドデザインロードマップの策定のことです。

行き当たりばったりはもちろんダメですが、将来を見越した“青写真”が必要です。

参考文献

少々古い本ですが、IT投資について非常にわかりやすく書かれた本です。タイトルに「SEのための・・・」とありますが、これからシステム開発を発注しようと考えている方(発注側の担当者さん)が読んでも役に立つと思います。

 

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