【書評】世界はシステムで動く‐いま起きていることの本質をつかむ考え方

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巨大な氷山と青く冷たそうな海が印象的な表紙の本。システム思考の1つである”システム・ダイナミクス”について紹介しています。著者のドネラ・H・メドウズさんは何年も前に(2001年に)亡くなっています。

システム・ダイナミクス基本の書

フローとストック、2種類のフィードバック・ループ、システムとレバレッジ・ポイントなど非常に重要な視点を提供してくれています。

既知の概念もあったのですが、そうでないもの、たとえば「レジリエンス」「自己組織化」「ヒエラルキー」というシステムの3つの特性に関する説明などは興味深いものでいた。

書店ではビジネス書に分類されていますが、自然科学や政治など世の中の仕組み(システム)についても関係する内容であり、ビジネスマンに限らず多くの方に読んで欲しい本です。

多くの人がシステム思考を身に着けることができれば、くだらない水掛け論や個人攻撃はもっとずっと減るんではないかと思います。

日本語訳について

「可能な限り原文の意図・意味を損なわぬよう」という配慮からなのか、直訳的な言い回しが多く、結果何が書かれているのかわからない、ということが多々ありました。

最後のほうは読むのがつらくなってナナメ読みです。(私にとって)特に重要そうなところだけは何回も読み直しましたが・・・

英語が堪能な方は原文にあたったほうがよいかもしれません。

訳者はシステム・ダイナミクスに関する実践者・実務者の方であり、翻訳を本業とする方ではありませんから仕方ないのかもしれませんが、これなら別に翻訳者をたて監訳するなどできなかったのだろうか・・・と思ってしまいました。

「日本語の作文技術」という本にマズい日本語訳の事例と、なぜそのような複雑怪奇な日本語になってしまうかの解説が載っていますので、翻訳に携わる方は是非一読いただきたいものです・・・

内容が良い(というか後半ナナメ読みなので、正確には”良さそう”)ので尚更そう思いました。

線形思考と非線形思考

話を戻しまして。

システム思考を強く意識すると「短絡」は罪である、とすら思えてきます。

本書では、ルーマニアのチャウシェスク元大統領(1989年のルーマニア革命にて処刑)の悪名高き「中絶と離婚の禁止政策」を、システム思考が欠落していた例としてあげています。これなどは「短絡」が罪を生む典型です。

ロジカルシンキングやなぜなぜ分析は「短絡」の罠に陥らないための技術とも言えますが、このシステム思考も同様です。

ロジカルシンキングが線形(リニア)の思考であるのに対して、システム思考は非線形(ノンリニア)の思考です。

ものごとの要素が増えその関係性がますます複雑になり、かつ変化が早い現在においては、ロジカルシンキングのような線形の思考に加え、システム思考のような非線形の思考ができなければ本質をついた正しい意思決定を行うのはより難しくなったように思います。

安易なハウツー本ではありませんので、明日から役に立つってこともないのですが、何事かを見たり考えたりする上で欠かせない視点を与えてくれることと思います。

ご参考

システム・ダイナミクスを取り扱っている本は他にもありますが、ピーター・センゲの「学習する組織」という本のほうが、素直な日本語訳で意味もとりやすかったように記憶しています。こちらもスナック感覚で読める本ではありませんが、それでもいくぶん読みやすいと思います。

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