コストベース・プライシングから価値ベース・プライシングへ

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人月商売というコストベース・プライシング・ビジネス

人月商売における取引価格は、コストベース・プライシングに分類されると思います。

コストベース・プライシングというのは読んで字の如くでして、コストを基準(ベース)に値段を決める(プライシング)やり方です。

例をあげてみます。

エンジニアが1ヶ月稼動した場合のコスト(人件費)が、仮に50万円(エンジニアの手取りじゃないですよ。社会保険料など含む。)だとしましょう。

目標としている粗利益率が30%だとすると、取引価格は、

取引価格 = 原価50万円÷(100%-30%) = 71.4万円 となります。

40%なら、

取引価格 = 原価50万円÷(100%-40%) = 83.3万円 です。

上の取引単価の価格帯が上の通りであれば、例えば、とあるシステムを構築するのに、1.5人月かかるとしたら、105万円~120万円で契約するということになります。

当たり前ですが、原価が一定で利益率を高くすると取引価格も高くなります。取引価格が高くなれば競争力は多少なりとも落ちます。

生産性と売上の関係

よく言われている通り、エンジニアの生産性というものは冗談抜きで何倍もの差がでることがあります。

Aさんが1.5人月かかるものでも、Bさんなら1.0人月で作り上げてしまうなんてことはザラです。

そうすると、担当するエンジニアで取引価格(ITベンダーからすると売上高)が異なるということになります。1.0人月あたり80万円の取引価格であれば、

担当エンジニアがAさんなら、120万円。

担当エンジニアがBさんなら、80万円、となります。

実際にはこの他にもこまごまとした要素が絡みますので、これほど単純ではありませんが、「エンジニアの生産性が高いほうが損する」という話にはこのような背景があります。

エンジニア個人としてはどうか?

ちなみに、この仕事について与えられた作業期間が1ヶ月しかなかったとします。この場合、Bさんは残業なしで納期に間に合いますが、Aさんは残業せざるを得ません。

結果、Aさんは0.5ヶ月分の残業代を得て、Bさんは残業代を得ることができません。

Bさんはとっとと仕事を終わらせて早く帰っているのですから、当たり前といえば当たり前なのですが、生産性が高いBさんのほうが、個人としての収入も少ないということになります。

やっぱりなんか変ですよね。

思わず長くなってしまいましたが、ここまで書いたことはIT業界で生きる人なら誰もが知っていることだと思います。

補足

取引単価や給与については、エンジニアの能力や年次(年次はどうかと思いますが)を加味して、様々な調整が図られはしますが、基本的な構造は上記の通りです。

更についでですが、エンジニアへの評価・報酬は非常~に難しい問題です。私が知っている限りですが、どこもいろいろと試行錯誤しておられます。

価値ベース・プライシング

ビジネスの基本は、価値交換です。

ポイントは「どこに価値を見出すか?」です。

  • システムをつくる作業者なのか
  • つくったシステムなのか
  • つくったシステムがユーザーに与える効果なのか

いずれもやることは「システムをつくる」ですが、「提供する価値」は明らかに異なります。

これからは、これまで以上に「情報システムのプロフェッショナルとしての価値」を明確にし、ユーザーへアピール・提供すべきではないかと考えています。

そうして「かかった原価+利益」ではなく、「提供する価値」に対して対価(お金)をいただくというビジネスを進めていくべきです。

いわゆる、価値ベース・プライシングです。

当然、かけた原価に見合う価値を創出できなければ逆ザヤとなります。

コストベース・プライシングにおける利益率や原価に、「提供する価値に対する対価」を含めているといえなくもないのですが、それをもっと鮮明にわかりやすく打ち出しましょう、という事です。

情報システムのプロフェッショナルとしての価値

これまでに、価値ベース・プライシングがまったくできていないかというと、そんなこともありません。

昔から存在するビジネスであるパッケージソフトウェアビジネスや、SaaSなどのクラウドビジネスでは、既に価値ベース・プライシングを実践しています。

パッケージソフトウェアやSaaSには「情報システムのプロフェッショナルとしての価値」が凝縮しています。

J.A.シュンペーターは、新結合(クリステンセンが言うところのイノベーションとほぼ同義)として、以下の5つを定義しています。

  1. 新しい財貨
  2. 新しい生産方法の導入
  3. 新しい販売先の開拓
  4. 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
  5. 新しい組織の実現

現実的には、これらは密接に絡み合いますが、わかりやすく言えば、パッケージソフトウェアビジネスは「1.新しい財貨」であり、「納品のない受託開発」で有名な(株)ソニックガーデンさんがやっていることは「2.新しい生産方法の導入」「5.新しい組織の実現」と言えるでしょう。

これらの事例をヒントとして「情報システムのプロフェッショナルとしての価値」を最大限に高めるビジネスを考えてみることには、十分に価値があることだと思います。

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カテゴリーIT